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2008年02月01日

私と在宅歯科医療

奈良県 審美歯科 歯科博士のコラム

【僕が訪問歯科をやめた理由(わけ)】
もう4年以上も前のことになりますが、僕はその頃、訪問歯科医療に燃えていた時がありました。その熱意はさまざまなネガティブな圧力により冷めていくわけですが・・・。

いま、巷を賑わせている介護保険をめぐる不正。そんなニュースを聞くたびに、組織の末端で働く者が、利用者と、どれほど時間をかけて人間関係を構築したとしても、トップの誤った判断により、一瞬にして崩れてしまうような、現実的にはきわめて脆い関係であることに虚しさを感じてしまいます。

国の政策として、在宅医療を手厚くしていく方向に間違いはないと思っています。しかし現場と言えば・・・。往診回数の制限、必要なときに決して動きはしないのに、代わりに単独で僕が動こうものなら邪魔をする団体の圧力、訪問歯科衛生士の確保が困難である事…等の理由により、現在は不本意ながらも訪問歯科診療を休止している状況です。


【見えないカーテン】
かれこれ3年ほど前のことになるでしょうか。特別養護老人ホームでの実際にあった出来事です。

スタッフの方から、「或る入所の方の口臭がひどくて、部屋に入ることすら気が滅入るので、何とかしてほしい。」というものでした。エレベーターで2階に上がり、進んだ先にその患者さんの個室がありました。引き戸を開けると、いままで嗅いだこともないような悪臭に近い臭気。いまだにその臭気は僕の脳に刻み込まれて忘れることができません。足を踏み入れると、1人の御婦人が横たわっておられ、言葉ともうめき声ともいえない声を上げて、電気もついていない部屋で、ぎょろっとした目つきで何か訴えているかのようにこちらを睨んでおられました。

早速お口の中を拝見したところ、真っ赤に腫れた歯ぐきにべったり歯石のついた黒光りした歯。その日の朝食らしき食塊が口の中に残っている状態でした。なんとかしなければならないと思った僕は、同行の訪問歯科衛生士と相談し、週に一度立ち寄って口腔清掃していくことを決めました。

担当衛生士による、献身的なケアと介護スタッフへの日々の口腔ケア指導により、その患者さんの症状はみるみる改善され、半年後には、まったく口臭がなくなっていました。

介護現場における大きな問題の一つに臭気というものがあります。現場スタッフの方々や在宅での御家族に聞くと、便のにおいは一瞬のことで、さほど気にならないものらしいのですが、口臭だけは、部屋に入るのをためらう位つらいものらしいのです。この見えざるカーテンを取り除くには、日々の口腔ケアが必須です。難しい知識などいりません。コップに水で薄めたうがい薬を入れ、そこに浸した歯間ブラシを使い丹念に汚れをひっかけて取り出してあげる作業を続けることで、口の中の状況は、かなり好転していきます。口のにおいがないだけでも、やさしく接する事ができるはずです。


【在宅での口腔ケアの重要性】
人は寝たきりになった際、死因として肺炎が多いということをご存知ですか。それは、口の中の汚れを日常的に吸い込むことによって起こる、誤嚥性(ごえんせい)肺炎であると言われています。日常ケアにおいて、ほとんどのケースで歯科医が介入するような難しいケースはなく、御家族、ヘルパーさん等、日々接する人が1日15分程度のお口の清掃で、この肺炎を予防できる事を是非とも皆様に知っていただきたいと思うのです。


このコラムも12回を数えるまでの連載になりましたが、お陰様で好評につき、今後も不定期になるかとは思いますが、隔週を目標に続けていきたいと思います。


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